地域おこし協力隊はここ数年、就職先のひとつとして人気が高まっていますね。
私も移住にあたってこの制度を利用した一人として、実際に多くの方と話す機会がありました。
協力隊現役メンバー、面接に来た方、そして大学生など、協力隊卒業生がカフェを営業しているということでたくさんの方が来店されました。
協力隊に興味のある方の中には、「地域に馴染めるのか?」という不安を抱えている方も少なくないでしょう。
私も、縁もゆかりもない土地に単身でやってきたときは、ワクワク半分・不安半分といった心境でした。
そんな中で出会った方々を通じて、「この人は協力隊になると少し苦労するかも…」と感じた共通の傾向がありました。
今回は、そんな“うまくいきにくいタイプ”を2つに分けてご紹介します。
1:新卒は協力隊におすすめできない理由
社会経験のないまま現場に出るリスク
社会人経験をしていない新卒の方が、いきなり地域おこし協力隊になるのはおすすめできません。
新卒という時期は、社会の基本を学ぶ貴重なタイミングです。
名刺の渡し方、電話応対、社内外でのマナーなど、普通の企業であれば段階的に教えてくれるものですが、多くの自治体の協力隊業務はそういった指導を前提にしていません。
私の見た限り、自治体が求めているのは「地域を知ってもらうこと」や「地域の課題に取り組んでもらうこと」であり、ビジネスマナーや社会人教育ではないのです。
実際にあった新卒協力隊のケース
過去に新卒で協力隊になった方の多くは、「会社ではなくサークルの延長線」のような気分で参加している印象がありました。
実際、協力隊先で指導する立場になるのは“協力隊の先輩”だったりするのですが、その先輩からも「新卒は指導が難しい」との声をよく聞きました。
何か気に入らないことがあると「これはハラスメントだ」と主張してしまう場面もあったそうです。
社会人になると、ある程度の我慢や対応力が求められますが、それがまだ身についていないことが原因だったのかもしれません。
パン屋志望の大学生との会話
ある時、パン屋をやりたいという夢を持った大学生が「まず協力隊になろうと思っている」と相談に来たことがありました。
私は「まずパン屋で修業してから協力隊でも遅くないよ」とアドバイスしました。新卒の時期は、基礎を築く大事な期間。地域活動に入る前に、やりたいことをしっかり“職業”として経験してほしいなと感じたからです。
その後どうなったのかはわかりませんが、どこかでおいしいパンを焼いてくれていたら嬉しいですね。
新卒でもうまくいった例もあるにはある
とはいえ、すべての新卒がダメというわけではありません。
うまくいったケースも少数ながら存在しています。
例えば、
・大学時代に既にその地域でのフィールドワーク経験があった
・SNS運用や動画制作など、地域が求めるスキルを持っていて即戦力となった
・地元出身で地域事情に詳しかった
など、地域と本人の相性がとても良かった場合です。
大事なのは「自分は社会人だ」という自覚と、「地域に学ぶ」姿勢を持っていること。
そうした意識がある新卒の方なら、十分に活躍できる可能性はあります。
2:協力隊になりたくてなりたくてたまらない方にはおすすめできない理由
想いが強すぎると地域とぶつかる
「どうしても協力隊になりたい!」という強い気持ちを持っている方も要注意です。
なぜなら、協力隊は“自分の理想を実現するための制度”ではなく、“地域と協力して課題に取り組む制度”だからです。
例えば、自分のビジョンや都市部のやり方を押し通そうとしても、地域の人たちにとっては受け入れがたかったりします。
協力隊に支払われる報酬の背景には、地域の方たちの支えや期待があることを忘れてはいけません。
地域おこし協力隊=永久就職ではない
協力隊は最長でも3年間。制度の中で得た経験や人脈をもとに、任期終了後のビジョンをしっかり持っておく必要があります。
過去には協力隊卒業後に会社を立ち上げた方もおられますが、それは“結果的にそうなった”のであり、制度の目的そのものではありません。
地域の方からは「都会からわざわざ来てくれた」と期待されています。
その気持ちを無視して、自分の想いだけで動いてしまうと、摩擦が生まれやすくなります。
「地域をおこす」ではなく「地域をおこす協力をする」
地域おこし協力隊は、主役ではなくあくまで「協力者」。
この立ち位置を見誤ると、「自分の理想を叶えたくて協力隊になったのに、思っていたのと違う」となってしまうのです。
地域の方々の長年の想いや暮らしを尊重しつつ、自分の力をどう活かせるかを探る、そんな視点が大切です。
まとめ
今回は「地域おこし協力隊の闇|こんな人は絶対なってはいけない2つのタイプ」というテーマでご紹介しました。
・社会人経験のない新卒
・想いが強すぎて視野が狭くなっている人
こういったタイプの方は、協力隊で苦労することが多い傾向があります。
ただし、どちらも“絶対NG”というわけではありません。
「自分に当てはまるかも…」と思った方は、少し立ち止まって、どうすれば地域や制度と上手に付き合えるかを考えてみてください。
協力隊の制度は、使い方次第で自分の未来を大きく切り拓ける可能性を秘めています。
制度を利用する前に、まず“自分自身の使い方”を見直すことが大切です。
それが、地域と自分、どちらにとっても良い選択になると思います。